Producer Team Member

Urban & regional Renovation Producer

Yoshitsugu
Shimizu
清水 義次

Urban & regional Renovation Producer 清水 義次

都市生活者の潜在意識の変化に根ざした建築・都市・地域再生プロデューサー

東京大学工学部都市工学科卒業後、教養学部アメリカ科学士入学。アフタヌーンソサエティを設立
建築・都市・地域再生、家守事業等のプロデュースを手がける。千代田区神田、新宿区歌舞伎町で現代版家守によるまちづくりを実践。その後、北九州市小倉魚町でリノベーションまちづくりの指針となるエリアヴィジョンづくりやまちを変えるエンジンとなるリノベーションスクールの仕組みを構築する。以降、全国の仲間とともに縮退時代に適合したまちづくり、人々の健康で幸せな暮らしを支える地域づくりを行っている。

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chapter01“まち”のリノベーションとは資源すべてを活かすこと

“まち”のリノベーションというと、どんなことをイメージしますか?空き家などの遊休不動産をテナントや人で埋めて活用することをイメージされる方も多いと思いますがそこにとどまらず、地域には、人的資源や歴史的資源、産業資源など、探せば沢山の資源があります。それらを余すことなく活用すれば、低コスト・低リスク、かつスピーディに事業を生み出し育てることができると考え、それを大切にまちづくりをしています。

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chapter02子ども時代のまち探検が原点

私は子どもの頃からまち歩きが大好きだったんですよ。元々、出身は野山ばかりの田舎なんですが、ある時甲府のまちに引っ越しまして。まちって面白いなぁと自転車でふらふら探検していました。背が高かったので大人のふりをして、色々なところに潜り込んでいましたね。社会風俗にとても興味を持っていたんです。それが原点ですね。

大学を卒業してから、マーケディングコンサルとして、上場企業を相手に新規事業の立上げ支援をしていました。入社時はわからなかったのですが、偶然にも、私の大好きな社会風俗観察が大いに生かせる仕事だったのです。面白みを感じて17年続けましたが、コンサルの仕事は、支援先の事業が上手くいかなくても文句言われるくらいでリスクもない。リアリティがないことが歯がゆかったのでしょう。実業をやろうという私の言葉に、当時のボスは、「コンサルタントや評論家の立場だった人が実際のビジネスをやってうまくいったのを見たことがない。絶対うまくいかないからやめろ」と言って止めましたね。なおさら闘志が湧いて、自分は実業をやろう!と決心して独立したんです。

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chapter03ピンチはチャンス!銀行の不良債権を生かしてのスタート

バブル崩壊直後の1992年。なんでこんな時期に独立するのか?なんて人には言われましたよ(笑)でも、ピンチはチャンス。南青山交差点からすぐの4軒を暫定利用で格安で借りられましてね。銀行の不良債権で、こんな時期でもないと借りられない物件。リノベーションして、そのうちのM字型のなんとも面白い建物を事務所に構えてスタートしました。

かねてからやりたかった飲食店にしました。半年の暫定利用だから都度更新をしていくんですけどね。スパニッシュバルやワインレストランなど。これが当たりまして、近所にその店を中心に25軒くらいの店が集まりました。駐車場と野良猫だらけだった風景は3年で一変したのです。これが、民間の力でエリアにインパクトを与えることができると実感させてくれた体験です。

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chapter04先読みは観察と分析から生まれる

時代を先読みする力は、学生の時に感銘を受けた「考現学」がもとになっていると思います。これは、柳田国男さんの民俗学を受け継いだ、今和次郎さんがつくった学問です。関東大震災直後の焼け野原になった東京の“まち”で、その後まちがどう移り変わるのかを、“まち”の人々をつぶさに観察、スケッチして、着る物や持ち物に至るまで詳細に記録を付け分析しているんです。面白いものの見方で、大変影響を受けましてね。

“まち”の片隅にじーっと座って、人々を見ているんです。都市部で生活している人の頭の中に芽生えた潜在意識の変化みたいなものを探り当てるという仕事です。私たちは日々メディアにさらされているので、その影響を多分に受けています。でも、先読みというのはメディアの後追いではなく、現場で自身の観察眼をもって行うことです。例えば、昔、渋谷の若者が目的もなく集まっている姿を日々観察していて、「時間消費」の概念が「物の消費」よりも大きいかもしれないと先読みしました。まさに現代はカフェなどの時間消費を売りものにしたビジネスが当たり前になっていますよね。

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chapter05不動産の活性化で産業クラスターを産む

コロナ禍の影響は大きいですね。働き方、住まい方、遊び方が全国で変わってきています。自然の中のグランピングやキャンプ場が人気を集め、まち中では屋外の公共空間の使い方が大切になってきました。東京では、少し都心を離れた住宅街で空き家や空き地がポコポコ発生するスポンジ化はいたるところに現れていますが、都心から近いところにも家賃が陥没する地帯がたくさん出ています。コロナ禍ではそういった面白いエリアが一層広がっているのです。

こういう変化する時期はチャンスです。衰退地域の中の半径200m、端から端まで徒歩で5分程度のスモールエリアを、キャラクターを持った面白いエリアに変えていくことを仕掛けていくと良いと思います。

遊休化した不動産を活用して、何をやりたいの?ということが大事です。不動産の事業でありながら、そのエリアで産業のリノベーションを行ったり、人と人がより良い関係を持てるコミュニティをつくったり、若い人材を育てたりしていきたいと思っています。